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コラム:”ダウンロード違法化”によるゲーム業界への影響は?

  • 掲載: 2008年10月21日 18:14
 ITmediaの記事によると、20日に開催された文化庁の「私的録音録画小委員会」にて、違法録画・録音物のダウンロード違法化がほぼ決定したとのこと。同庁は、ダウンロード違法化を盛り込んだ著作権法改正案を来年の通常国会に提出することを目指しています。

 不正コピーによる被害は、映画や音楽業界など様々なところに影響を与えていますが、ゲーム業界も例外ではありません。今回の法改正によって、ゲーム業界はどのような影響を受け、変わっていくか考えてみたいと思います。
 まず今回のダウンロード違法化について、大まかに説明すると以下のようになります。
  • 不正コピーされたコンテンツを、ファイル交換ソフトなど用いてダウンロードして”インターネット接続を切っても利用可能な”状態で端末に保存すること
     (つまり、ファイル交換ソフトやブラウザなどのキャッシュ(一時ファイル)は対象外)
  • そのため、YouTubeなどをブラウザで見る場合は「ストリーミング」となり、違法ではない
  • 知らずにダウンロードした場合はセーフ
  • 今回の法改正で「違法」にはなるが、警察が「逮捕」する事は出来ない
  • なので著作権側は、今回の法改正を布石として徐々に規制強化していくらしい

 このように、実際は結構甘めな法改正になるわけですが、ユーザー保護のことを考えると妥当でしょうか。

 何はともあれ、長年議論されてきたダウンロード違法化が現実のものになろうとしていますが、ゲーム業界に与える影響はどのようなものがあるでしょうか。先ほど紹介した「私的録音録画小委員会」に参加しているITジャーナリストの津田大介さんが、20日に2ちゃんねるの「ニュース速報(VIP)板」にて「ダウンロード違法化がほぼ決まったけど何か質問ある? 」というスレッドを立て、2ちゃんねらーの質問に答えています。
 その中に、ゲーム業界に深く関係のある一文を見つけましたので、紹介したいと思います。

 プログラムに関しては現時点では適用除外だけど、ゲーム業界がプログラム含めろと強く要望しており、どうなるかは微妙な状況。


 これがどういう事か、最近問題になっているマジコンを例に考えていきたいと思います。マジコンでDSソフトを起動するためには、DSカードからゲームのファイル、つまり「ROMデータ」を取り出す必要があります。
 それをファイル交換ソフトや違法サイトにアップロードして、それをマジコンユーザーがダウンロードして起動するという感じだと思うのですが、プログラムも法改正の範囲内になった場合、この「マジコンユーザーがダウンロードして」という行為が違法になるわけです。

 任天堂はマジコンの販売業者を相手に訴訟を起こしましたが、コピーされたROMデータの入手が違法となった場合、マジコンユーザーに対して訴訟を起こす根拠になり得るわけです。
 販売規制のみだとマジコンユーザーの拡大防止という効果しかありませんが、ROMを入手するという行為自体に手を付けることが出来れば、メーカーにとっては願ったり叶ったりでしょう。

 メーカーがユーザーに起こした訴訟と言えば、海外メーカー5社が2万5000人を相手に和解金を請求した、というニュースが記憶に新しいです。
 簡単に言えば、日本でもこれが出来るようになる”可能性が出てきた”ということになります。ですが、あくまでも可能性であって、実際に日本のメーカーがユーザーを相手に訴訟を起こすかと言われれば、可能性は低いような気がします。

 とにかく、大きな利点は、権利者側が「ダウンロードは違法です」と大きな声で言えるようになることです。ダウンロードが違法である事をCMなどで告知していけば、一般層に対しては大きな効果が見込めるのではないでしょうか。例えば小中学生とかですね。
 そういえば不正コピーされた着うたの違法化も、実は中高生がメインターゲットになっているようですので、そういった人達には一定の効果が見込めると思います。

 さて最後に、なぜ不正コピーが駄目なのかという根本的な話をします。まず、メーカーにお金が入らないのが大きな問題です。現在、ソフト1本を開発するために億単位のお金が必要になるわけで、そう簡単にソフト開発ができないような環境になりつつあります。
 個人的には、ゲームを買うという事は、「このお金で次の作品も頑張ってください」という、メーカーに対する投資とも考えられると思うんですね。中古問題にも言える事ですが、出来れば新品を買って、メーカーに対するお礼という意味も含めてゲームを購入して欲しいです。

 当然のことですが、新品ソフトを買うことでメーカーとの関係が出来るわけです。そういった意味で「マジコンユーザーは客ではない」という考えは正論だと思いますし、そういう考え方が出てくるほど、不正コピー問題は無視できないものになっているという事です。

 違法化でどのように変わるか、プログラムもダウンロード違法の範囲に入るかという点については今後の状況を見守っていきたいところ。でも、「逮捕する力も無い法律なんて意味ない」と言われれば確かにその通りですし、この法律で不正コピーを完全に止めることは出来ません。
 しかし、警察が行動に出る前に、またはメーカーが法的手段に出る前に、不正コピーユーザーは良心的な行動を取って欲しいと、そう願うばかりです。

◎関連リンク
 □“iPod課金”見送り ダウンロード違法化へ (ITmedia)
 □「ダウンロード違法化で何か質問ある?」――津田大介さんが2chにスレ立て (ITmedia)
 □ダウンロード違法化がほぼ決まったけど何か質問ある?  (日刊黒歴史)

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