玉樹氏:もっとも単純な機能としては、メモを書き込むことができます。
たとえば、お母さんが「おやつはここです」というメモを書いて「Wii伝言板」にポンと貼っておく。冷蔵庫のドアに貼られたメモのようなものを思い浮かべてもらうとわかりやすいと思います。そういったメモは、カレンダーのその日のところに貼られます。
玉樹氏:たとえば、Wiiで『どうぶつの森』を遊んでいると、「今度の土曜日に村でコンサートが開催されます」という情報が、ユーザーがゲームを立ち上げていなくても、自動的にカレンダーに貼られるというようなことです。
あるいは、『脳トレ』のようなソフトがあった場合には「今日の脳年齢は50歳でした」というような結果をそこに貼り付けることも可能です。
玉樹氏:オンラインになると、「Wii伝言板」を介して様々な情報を友だちとも共有できてしまいます。といっても、情報がすべて流れてしまうというわけではありません。
誤解されないように言っておきますと、ここでのネットワークというのは、ニンテンドーDSの『どうぶつの森』の仕組みと同じで、お互いがお互いを登録しないとつながらないようになっています。ですから、知らない人からハラスメントを受けることもありませんし、スパムメールのような怪しいメッセージが届くこともありません。
岩田氏:ネットワークでつながることはとても楽しいことですけど、不特定多数につながるとストレスや恐怖感がありますからね。
玉樹氏:はい。基本的には、登録した友だちどうしと、情報をやり取りしていく形になります。
玉樹氏:さらに、「Wii伝言板」ではゲームのデータや、静止画などもやり取りすることができます。
また、携帯電話とメッセージをやり取りすることも可能になりますから、家族の例えばかりになって恐縮ですが(笑)、残業中のお父さんに居間のWiiからメッセージを送る、なんていうこともできてしまうんです。
そして、返事に写真付きのメッセージが届いたり。総合的にいうと、友だちどうしとか、家族とか、そういった身のまわりの人たちと、Wiiを介して「ゆるやかにつながっているような感じ」になる、そういうものだと思っていただければいいと思います。
玉樹氏:あの、初めて「Wii伝言板」を見た人からよく言われることで、「家族の中の誰宛、っていうふうにできないんですか?」っていう意見があるんですね。
つまり、個人個人の伝言板が持てたほうがいいんじゃないかと。しかし、この機能の根底にある思想としては、個人の携帯電話に直接他人から連絡が入るというよりは、家庭のポストの中にハガキが何枚か、ぱらぱらと届いているようなものに近いんです。で、ポストをパッと開けると、何通入っているかすぐわかって、ハガキを見ると、「あ、父ちゃんにだ」っていう。
黒梅氏:家族のひとりひとりにアカウントを作ることも仕様を変更すれば、できることはできるんです。でもやっぱり、Wiiという機械にそれは馴染まないんですね。
端的な例を挙げると、みんなで触ってほしい機械なのに、個人のアカウントを設けたら、メニュー画面にパスワードというものを入れなくてはならない。Wiiの電源を入れたときに、「ユーザー名とパスワードを入れてください」っていうのは、なんというか、許せないという感じがしたんです。これは議論していたほぼ全員が同じ意見でした。
岩田氏:うん、けっきょくそこだったような気がしますね。もうWiiのコンセプトとしてありえないよと。だって、1秒でも早く起動させたいということで全社をあげてがんばってきたのに、そこでユーザー名とパスワードを入れないと使わせてあげないっていうのは、もう論外だと。(中略)
ですから、考えれば考えるほど、結論はひとつで、やはりWiiは家族のパブリックスペースなんです。家族に限らず、みんなが共有しているからこそおもしろい姿になるようなものがあるんじゃないかと思うんですよね。