野上氏:ぼくが担当していたWii用ソフトの中に、キャラクターの顔をエディットして、そのキャラクターをソフトの中に登場させるという企画があったんです。
で、その企画とは別のところで、ニンテンドーDS用に開発されていたソフトで同じようにキャラクターの顔をエディットして、それを交換して楽しむような企画が動いていました。
ある日、そのDS用ソフトの存在を岩田さんから知らされまして、見たところすごくよくできているし、自分が考えていたことも一致したものですからWii用のソフトの中に組み込むことになったんですね。で、Wii用のタイトルとして動いていたら、突然、それをWiiの本体機能のひとつにする、ということになりまして、驚いているうちに、いまに至る、というわけです(笑)。
岩田氏:もともとのWii用のソフトで宮本(茂)さんが『こけし』と呼んでいたものですよね。
野上氏:はい。宮本さんが以前から作りたかったもので。当初の企画としては、3つのソフトを出して、その3つに、自分がエディットしたキャラクターが共通して登場する、というものでした。ですから、その構想を、3つのソフトだけではなく、Wii全体に広げたのが「似顔絵チャンネル」なんです。
岩田氏:ニンテンドーDSの試作品のときは、日本人の開発者が日本人のために顔のパーツを作っていたけど、Wiiのチャンネルにするとなると、当然、「世界中の顔」が対象になりますからね。
野上氏:はい。世界中の人の似顔絵が作れなければならない。これが、思った以上にたいへんで。外国人の顔のパーツというものが、困ったことにうまくできないんですね。(中略)それで、海外の人にいろんな意見を聞いたり……。
野上氏:エディットしたキャラクターがいろんなソフトに登場するというのはいちばん最初のソフトを開発しているころからありました。ちなみに、Miiは、ソフト側で対応さえしてもらえれば、ソフトメーカーさんのソフトにも登場させることができます。
あと、ちょっとおもしろいところでいうと、Miiはメインのキャラクターとして登場するだけでなく、ただの「その他大勢」として不意に顔を出すときもあります。たとえば『Wii Sports』の観客席に、昔、何気なく作ったMiiがいる、なんていうこともあります。
また、MiiはWiiリモコンに入れて持ち運ぶこともできますので、友だちの家のWiiで、自分のMiiを使って遊ぶこともできます。
野上氏:簡単にいうと、「似顔絵パレード」は、いろんな人の作ったMiiがネットを介して行き交う仕組みです。まず、作ったMiiを並べておくことができる、「似顔絵広場」というものがあるんですが、はじめは、自分の作ったMiiしかいないんですね。
でも、時間が経つと、「WiiConect24」の仕組みを使って、「誰かのMii」がそこに遊びに来るんです。同じように「自分のMii」も誰かのWiiに登場する可能性がありますが、ユーザーの許可なく勝手にそうなってしまうことはありません。Miiを作ったときに、それをネット上で行き来させるかどうか選択することができますので、そこでユーザーが許可したMiiだけが誰かのWiiに登場することになります。
岩田氏:世界のどこかからMiiがやってくることもあるんですよね。
野上氏:はい。まったくのランダムで行き来します。あ、行き来といっても、自分のWiiからいなくなるわけではありません。
岩田氏:いまのところ、手応えはありますよね。少なくとも私は、どういう広がりを見せるんだろうと、すごく楽しみにしています。
野上氏:はい。あとは、対応するソフトがどんどん出てほしいですね。世界中のMiiが交流するという野望を持っていますので(笑)、あと、「似顔絵を作るのがうまい人」って、やっぱりいると思うんですよ。昔、クラスでいちばん絵のうまい友だちのところに「あれ描いて」って頼みに行ったみたいに「あの人の似顔絵作って」って頼みに行くようなコミュニケーションが生まれたらいいなと思っています。